
社会起業家に求められる”成長性”の視点
個人的には、非営利活動や社会貢献活動は、成長性よりも持続性の側面が語られることが多い印象を受ける。
近年注目され始めたソーシャルビジネスも、社会貢献にビジネス的なアプローチを取り入れることで、事業の持続性を高めることが可能、といった側面から取り上げられることが多いのではないだろうか。
しかしよく考えれば、非営利の分野においても、事業の成長性を意識することは重要なはずだ。
営利の世界においては、株主の要求に従って、経営陣は成長性を強く意識せざるを得ない環境にある。
ただ、この「成長性の視点」は一歩間違えると重大な罠となる。
すでに営利の世界が体験しているように、成長性を意識するあまり、株主や経営陣が極度の短期的な視点に囚われ、
目先の利益-四半期の決算に向けてどう利益を積み上げるか-しか見えなくなることがある。
社会問題に取り組む社会起業家、社会的企業がこういった罠に陥り、全体的、長期的視点を失ってしまうことは許されない。ただ、本来は「短期的視点」と「成長性の視点」は別物なはず。
「長期的・全体的視点」を持ちつつ、「成長性の視点」を同時に持つ事は、決して矛盾してはいない。
特に、貧困問題や環境問題等、グローバルに広がる問題を解決するのであれば、目の前のプロジェクトに注力しながらも、どうやって他の国や地域にプロジェクトを迅速にロールアウトするか、どうすればよりスケーラブルなソリューションを創りだせるか、といった事についても同時に考えていく必要がある。
ただ、通常のビジネスように急激な成果を望めないケースも多々あるはずだ。
時間をかけて少しずつプロジェクトを進めていかざるを得ない状況の方が多いかもしれない。
しかし、時にONE ACRE FUNDの様なアグレッシブな「成長性の視点」を持っておくことも重要だ。
(文/五十嵐裕一)
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